佐野土鈴
 種類:土人形
 制作地:栃木県佐野市
 現制作者:相沢俊作(二代目)
       相沢市太郎(明治35年(1902)−平成17年(2005年)初代)・・・相沢俊作(二代目)

 明治生まれの相沢市太郎は子どものころから近所で箱庭玩具や鳩笛を製作していた片柳喜一郎(大正8年に栃木に転居)の手伝いで小遣い稼ぎをしていた。卒業後も片柳家に勤め、10年間修行を積み独立した。その後箱庭の道具だけでなく土鈴制作も始めた。号は土比古。自由な発想で数多くの土鈴を生み出し、100歳を超え生涯現役で制作されていたとのこと。
 多治見産の土で制作している。初期のころは泥絵の具を膠に溶いて彩色をおこなっていたが、後にアクリル系の絵の具による彩色となった。鈴紐として麻縄が付く。地元の民話を題材にしたり、干支や縁起物、神社仏閣の授与品と多岐にわたり制作をおこなった。
 また土鈴以外に八朔人形を土人形で復元していた。八朔人形は明治初期ころまで初午の男子に「きっこ馬」、女子に「京女郎」の練り物の人形を贈る風習があったという。八朔人形自体は戦前に廃れてしまったが、戦後に練り物から型を抜き相沢市太郎によって土人形で復元された。
             八朔人形・・・・田沼練り物へ  

 相模土鈴の相沢伊寛は市太郎の子息にあたる。

佐野土鈴 招き猫3種
 佐野土鈴(左)と相模土鈴(右)


 招き猫は現在わかっているのは3種類。右手挙げ2種と横座りの今戸タイプが1種類。目はキトンブルーのような青で彩色されている。
これは猫以外の動物でも青い目が多くあるようなので佐野土鈴では一般的な彩色なのだろう。

巳の土鈴も目が青い


 佐野土鈴のオリジナル招き猫はふっくらした顔が特徴。赤い首玉に二重?それとも小さな前垂れをつけている。厚手の生地でコロコロと低い音がする。
二代目土比古(相沢俊作)のこのサイズの猫には斑がない。  招き猫十八番 「招き猫22 佐野土鈴/相沢民芸店」

招き猫(小)  福招き猫   
藤色の縁取りに黒の斑 青い目と赤い首玉
右手挙げ 尻尾は彩色されていない
白猫に藤色の縁取りで黒い斑が3個所描かれている
爪・鼻・耳が薄いピンクで描かれている
赤い首玉にピンクの前垂れには緑の縁取りがある
表に金で「福」、後に彩色なしで「来」の押し印
目は青に黒い瞳
首玉に鈴紐の麻紐がつく

高さ86mm×横56mm×奥行55mm 
  前後の押し印 
 『福』  『来』


 横座りの招き猫は今戸タイプで優しい顔をしている。型抜きをしたのか、今戸を模して型を作ったのかは不明。

招き猫横座り
 
左手挙げ
         
今戸タイプの横座り招き猫
招き猫(小)と同じく白猫に藤色の縁取りに黒の斑
左手挙げで赤い太い首玉にピンクの小さな前垂れ
挙げている左手の先の爪・鼻・耳が薄いピンクで描かれている
この猫のみ目は細めている
首玉に鈴紐の麻紐がつく

高さ83mm×横70mm×奥行46mm


1993年に購入しているが
どこで買ったかは記憶にない 
   


 これは佐野の相沢民芸店で直接購入したもの。相沢市太郎さんにお会いしたのはこの時一回のみ。

招き猫(大)  
キトンブルー?の目 赤い首玉
右手挙げ 尻尾はある
右手挙げの白猫で斑はない
赤い首玉にピンクの前垂れには緑の縁取りがある
尻尾はあるが彩色はない
薄いピンクで鼻・爪・耳が描かれている
目は青で黒い瞳
首玉に鈴紐の麻紐がつく


高さ116mm×横76mm×奥行73mm 


購入記録に1997年11月26日に購入とあった。
下の短冊はそのときにいただいたもの。

        

    1997年訪問時にいただいた短冊

(左)
恙なく(つつがなく)今日も一日
              無事カヱル

(右)
健康は何にも勝さる
          身の宝
             九十五才 土比古

       土比古の落款


  鈴を振りふり 「相沢土比古氏」



参考文献
招き猫尽くし (荒川千尋・板東寛司、1999 私家版)
全国郷土玩具ガイド2(畑野栄三、1992 婦女界出版社)
おもちゃ通信200号(平田嘉一、1996 全国郷土玩具友の会近畿支部)
招き猫博覧会(荒川千尋・板東寛二、2001 白石書店)
日本の土鈴(森瀬雅介 斉藤岳南、1977 徳間書店)
土の鈴(石山邦子、1994 婦女界出版社)