田沼練り物

田沼練り物
 種類:練り物
 制作地:栃木県佐野市(旧 栃木県安蘇郡田沼町)
 制作者:石橋常吉(廃絶)

 昭和の初期に豊岡系の張り子と鴻巣系の練り物を制作していた。練り物は八朔人形とも呼ばれ農家の副業として制作されていたようである。販路は近隣の市のみであったという。佐野近辺では八月朔日に初子の男子には「きっこ馬」や「天神」、女子には「京女郎」の人形を祝いに贈る風習があったが、それも大正始め頃には廃れてしまった。その後、戦前までに廃絶した。情報量は極めて少なく詳細はわかっていない。
には廃れてしまった。
 下記の有坂興太朗の郷土玩具展望によれば八朔雛は昭和16年の出版当時すでに廃絶していたが、注文があれば制作していたようである。達磨の方が後まで生産していた様子がうかがえる。

郷土玩具展望中巻(有坂興太朗)より
 田沼の八朔雛
 馬乗り武者と飾り馬と、花魁の三種、いづれもネリ物型抜き、大小数種あり、飾り馬最もよく、麻苧を補助材料とす。馬乗り武者は鎧兜に身を固めたる武者、鼻下に髭を蓄へ悠然と馬に跨がれる構図にして、武者はアトより鞍上に乗せ得るやうに別に製らる。花魁はすこぶる珍にして、デッサンを無視し、頭大、首長く、児童が描ける自由画の感あり。これらは悉く同地方の八朔に飾れるもの(佐野町にも同様の生産あり)早く廃絶したれど、今なほ生産者あり、需めに応じて製作す。
田沼の達磨
 暦一月十二日の初市に達磨鬻がる。豊岡達磨の地盤なれど、こゝには前記石橋常吉の製品が僅かばかり出店す。石橋の達磨は張り抜きとネリ製と二種あり、依然は豊岡に倣い、ネリ物は鴻巣に準ず。但し、この市場甚だ微弱なり。


田沼練り物の招き猫頗頗

型は鴻巣のものと見分けがつかない。
彩色もほとんど同じである
面相が異なる
招き猫尽くし (荒川千尋・板東寛司)より  
田沼練り物? 
高さ70 mm×横50mm×奥行45mm

 おそらく鴻巣練り物と思われるが、
田沼練り物という線も捨てきれない。
形状・彩色共に鴻巣と見分けがつかない。
面相は若干招き猫尽くしの田沼練り物に似る。

虫食いはないが、
ネズミにかじられたようなあとがある。
骨董市でこんなものでもよければと100円で入手。
入手当初から田沼の可能性もあるかとは
考えていたが、
決定的な根拠を見いだせないでいる。
ネットオークションに出た田山練り物と
思われる立ち娘(京女郎)
蒐集家の収蔵品だったようである
裏書きに田沼作で制作者は不明とある
昭和19年5月20日に入手しているが、
店舗や制作者から直接に購入したのか、
譲り受けたものかはわからない

制作を依頼していれば制作者はわかるはず。

頭部は差し込みの頭を使用しているようである。
胡粉の剥がれたところから下地が見え、
練り物であることがわかる

かつて佐野土鈴の相沢市太郎により
八朔人形(土人形)が作られていた。
それは戦後にこの練り物から型を抜き、
土人形で復元したものであった。

 相沢市太郎作八朔人形


(掲載許可を取っていないのでご連絡いただければ、
正式に掲載申請いたします)
  有坂の記載通り首が長い
 胡粉の剥がれ練り物の下地が見える コレクターの裏書き
左の天神も田沼練り物と思われる赤天神


(掲載許可を取っていないのでご連絡いただければ、
正式に掲載申請いたします)
八朔人形として売られていたものか?  









参考文献
招き猫尽くし (荒川千尋・板東寛司、1999 私家版)
全国郷土玩具ガイド2(畑野栄三、1992 婦女界出版社)
おもちゃ通信200号(平田嘉一、1996 全国郷土玩具友の会近畿支部)
埼玉県民俗工芸調査報告 第14集 鴻巣の赤物(埼玉県立民俗文化センター、2003)
さいたまの職人 民俗工芸実演公開の記録((埼玉県立民俗文化センター、1991)
郷土玩具展望中巻(有坂興太朗、1941 山雅房)