2009年7月22日
いよいよ上海日食が近づいてきた。しかし天気予報はどうもすっきりしない。上海だけでなくトカラも危ない。早く明けたはずの梅雨がもどってきて前線が居座っている。とにかく天気がどうであろうと行くしかない。
荷物をまとめるがけっこう重くなってしまう。まずメインの三脚がキャリーバックに入らない。急きょサブに予定していた三脚がメインに昇格した。そして引退していたさらに小型の三脚も復帰した。ちょっと役不足なのだがここはしかたがない。結局総重量27kgになってしまった。その内手荷物が9kgほどだったので問題なくクリアできそう。出発当日まだ日食メガネができていない。しかたがないので現地で作ることにする。
7月20日
2009年7月20日、10時ころ自宅を出発し、羽田空港に向かう。
羽田国際空港は混み合っている。いろいろな旅行会社のツアーが重なっているのだ。チェックインを済ます
久しぶりの国際便いよいよ出発、ワクワク。
離陸して雲の上に出るがそこも曇っている。ちょっと不安。上海まで2000kmほど。2時間半のフライトだ。近い。
やがて着陸態勢に入り地表が見えてくる。気温40℃とのアナウンス。やはり日本とは違う。
羽田国際空港は日食客でいっぱい | これが上海航空 FM816便 | 雲の上に行っても曇り |
気温40℃ この陽射しをとっておきたい |
上海虹橋国際空港到着。タラップをおりる。そう言えば最近は飛行機もタラップをおりることが少なくなった。やはり暑い!雲が多いが陽射しもある。この陽射しが何とか明後日までもってほしい。
バスで一路宿舎へ。今日のホテルは富豪環球東亜酒店(REAGAL INTERNATIONAL EASTASIA HOTELl)。なかなかいいホテルだ。廊下の調度もいい。今日の部屋は12階で眺めもいい。ちょうど遠くに上海テレビ塔が見える。部屋の中はエアコンが効いているが、窓に近づくと暑い。今回は一人でダブルの部屋を使っているので割増料金になってはいるがその分快適だ。NHKを見られるので日本の情報も入手できる。風呂はガラス張りで何だかラブホテルみたいだ(シャッターはおりるが)。洗面所と独立している日本のような浴室なので落ちついて入浴できる。
ちょっとゆっくりして、夕食はバスで出かける。上海がにで有名な店らしいが残念ながら今はその季節ではない。
これが本日のホテル 富豪環球東亜酒店(REAGAL INTERNATIONAL EASTASIA HOTELl) | ||
NHKを視聴できる | エレベーター口から | 豪華な廊下 |
部屋の窓間ら | 左側の遠くにかすむのは上海テレビ塔 | ホテルの日食案内 |
部屋にはミネラルウォーターが2本用意されている。散歩も兼ねて近所のコンビニに飲み物を買いに行く。お茶類は甘いと聞いていたので何にするか迷う。でも試しに微糖のお茶を飲んでみることにする。日本と違いレジ袋には入れてくれない。明日のモーニングコールは遅いのでゆっくり寝られる。
7月21日
出発が遅いので朝はゆっくりできる。朝食を食べに行く。けっこうシンプルな朝食だ。まだ時間があるので近所を散歩してみる。朝方はあまり暑くないと甘く見ていたら歩いているうちにだんだん汗が出てきた。地下鉄の駅にもぐってみる。タッチパネルで切符を買うようだ。こちらも日本と同じで電子化が進んでいるようだ。地上に出ると地下鉄の入り口あたりで人が群がっている。どうも弁当売りのようだ。その場で好みの具を入れて太巻きずしのようにすだれで丸めている(海苔はないが)。横からは棒でつついて押し固めている。日本で言えばおにぎりにあたるのだろうか。けっこう繁盛していた。しかし暑い中なので食中毒は大丈夫なのだろうか。
上海の街中では来年の上海万博に向けていろいろなところで整備が進んでいる。近代的な高層ビルを建設している下では、廃材を積んだ大八車が人力で車道を走っている。上海は近代と日本の昭和30〜40年代が混在した不思議な街だ。
今日は観測地までに移動と下見だ。移動といっても高速道路で120kmほどなので近い。
途中で休憩。高速のコンビニで飲み物を調達する。「便利店」わかりやすい。だんだん中国の習慣にも慣れてきた。
ほどなく観測地の華荘生態農業園に到着。観光農園のような施設だ。観測地までけっこう距離があるのだそうだ。これは重い荷物を持っていくのが大変そうだ。しかしとにかく暑い。今日も40℃くらいになりそうだ。とにかく暑さで参ってしまう。途中の売店で一生懸命客寄せをしている。帽子が10元だ。これは安い!早速1個確保。
華荘生態農業園 |
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個人所有の観光農園のような施設だ | |
池の北側が今回のメイン会場 |
芝生の園内は晴れれば暑そうだ。やはり暑さ対策が必要だ。もっとも対策が必要なくらい晴れてくれればいいのだが・・・。明日の昼食場所を確認し、さっきの売店でアイスキャンデーを買ってバスにもどる。
明日の観測地 (地図の中央付近にある丸い山の上にある見晴らし台から南側を眺める) |
本日の昼食は烏鎮の田舎料理とのこと。「菜根香酒楼」はけっこう座席数もある。ここは取り皿がない。いわゆる映像で見ていた中国の家庭そのままで、茶碗のご飯の上におかずを取ってのせて食べる。頭や足もそのまま鳥1羽が入ったスープがおいしい。
その後は水の都市「烏鎮」の観光。ちょっと時間が短いのが残念。一日楽しめそうだ。
本日の昼食場所「菜根香酒楼」 | ||
ちょいと烏鎮観光 | 見学施設共通券になっている | |
烏鎮とは | ||
中国名物の大看板だが | 人が生活する路地 | |
無料試飲にみんなつられる | 三白酒は50度くらい | |
水郷都市 | すべて艪による手こぎ | |
ここがメイン通路 |
けっこう外国人のツアーも多い。ガイドの周さんによれば運河沿いの家は一階は湿気が多いので二階が寝室になっているのだそうだ。
さて本日のホテルは烏鎮蓬達度暇酒店(WUZHEN PENGDA HOLDAY HOTEL)。地方都市のホテルなので昨日に比べるとかなり落ちる。日本のビジネスホテルといったところだろうか。やたら廊下も暑い。ここもなぜかシャワールームはガラス張り(磨りガラスだが)。シャワーとトイレは隣り合わせでシャワーカーテンもないので、シャワーを浴びると便器が水びたしになるのは困る。
インターネットはつなぎ放題なので明日の天気を調べる。絶望的だ!外の雲行きも怪しくなってきた。
本日の夕食は先ほどの水郷都市東柵地区入り口前にある子夜飯店。どうも料理の出てくる順番がわからない。日本人の感覚だともう終わりかと思うとまた次に重いものが出てくる。途中に口直しの甘いものを出すのだろうか。料理の構成は昼食に似ている。
外では稲妻が光っている。雨も落ちたようだ。
本日のホテル 烏鎮蓬達度暇酒店(WUZHEN PENGDA HOLDAY HOTEL) | ||
東柵地区入り口前にある子夜飯店 | ||
今日の部屋 4階のネオン裏(”達”の向こうあたり) | ||
インターネットは無料接続 |
宿舎に帰ったあと、飲み物を買いに街に出る。不夜城の上海と違い、日本の地方都市と同じで閉店は比較的早い。個人商店は表にイスを出して涼みながら店を開けているところもある。スーパーはシャッターを下ろしているところだった。コンビニはない。しかたがないので個人商店で購入する。数字がわからないのは困る。ここではおじさんは袋に入れてくれた。
インターネットが快適につながったので日記の更新をおこなう。
外は本格的に雨になっていた。気合いは入らないがとりあえず撮影機材を準備する。明日のモーニングコールは早い。早く寝るとしよう。
7月22日
時刻は現地時間(日本より1時間遅い)で、デジカメの記録時刻をあとから更正しています。日食の経過から見るとほぼあっていると思われる。
5:15モーニングコール。外は絶望的な空。インターネットで調べるが降雨確率95%!雨も降ってくる。こりゃだめだ。
1階に朝食パックをもらいに行く。朝が早いので朝食は間に合わない。中に入っていたのは中国風菓子パン、豆乳飲料、ゆで卵、それにミネラルウォーター。重い足取りでみんなバスに乗り込んでいく。帽子を忘れてしまった。この天気では必要ないだろう。
観測地到着。外は小雨。誰も日食が見えるとは思っていない。メイン会場の芝生付近で600人以上が雨宿りするのは難しい。そうなると屋根のある昼食場所か?ベテランが「どうせ芝は濡れているだろうし、雨宿りするところも数は少ないのでここがいい」と入り口を入らずもぎりのいる接待中心(接待センター)の外の回廊に陣取る。確かにその通り、「その案にのった!」ということで会場には入場せずに場所に余裕のあるこの地を観測地点とすることに決めた。
とりあえずみんな持ってきた機材を出して組み立て始める。雨は時々強く降ってくる。やがてみんなで機材の説明会やら撮影会が始まった。こちらも三脚や自動経緯台はバスに置いてきたので600mmのレンズを外し、24−120mmのお散歩レンズに切り替え、皆既中の明るさの変化の記録に集中することにした。
皆既まであと1時間を切ったころ偵察隊が帰ってきた。みんなやはり屋根の下に避難して三脚にカバーが掛かっている状態だそうだ。
こちらも様子見を兼ねて売店に飲み物とアイスクリームを買いに行く。みんなあきらめ顔でメイン会場になるはずだった池の向こうの芝生にはあまり人影が見えない。
最近は国際電話を使える携帯電話が普及しているので各地から連絡が入っているようだが、どこも天気は思わしくないようだ。
皆既まで20分を切った。何となく少し暗くなってきたような気がする。小雨が落ちてくる中みんな空を見上げる。皆既まであと10分ほどになったとき雲の切れ間から太陽が顔を出した。欠けている。にわかにみんなの動きが慌ただしくなる。何を出すべきかみんな迷っている。もう赤道機をセットしている時間はない。
9:24:13 欠けている! | 9:24:25 | 9:26:51 みんなの動きが慌ただしくなる |
9:27:36 | 9:30:02 | |
9:30:20 | 9:31:50 |
双眼鏡に日食メガネをセットする。三脚がないので手持ちで撮影するしかない。しかもいちばん望遠で120mm!厚い雲の向こうに欠けた太陽が見えている。「99%!」パソコンで日食シミュレーションソフトを動かしている人が叫ぶ。「99.5%!」いよいよ来るぞ。雲が自然のフィルター役をしているので減光フィルターは必要ない。それだけに撮影も難しい。かなり暗くなってカメラの操作も難しくなる。
9:34:35、点となった太陽は暗闇の中に吸い込まれ消えていった。第二接触だ。残念ながら厚い雲にじゃまされて黒い太陽は見えない。暗闇の中時間は過ぎていく。
9:33:11 まるで夜だ 9:17:56と同条件で撮影(F5.6 1/125秒) 画像処理をすると・・・ | |
9:34:34 | |
9:34:35 | 9:34:35 皆既前最後の画像 |
あたりは夜のような暗さ。カメラの表示も見えない。周囲の風景を撮影するが手持ちでは提灯やパトロールカーのライト以外ほとんど何も写らない。
9:35:06 皆既中 太陽は雲で見えないがこんな暗さ 提灯が写っている F5.6 1/30秒 |
やがて「リングが見える」という声で薄雲を通して皆既中の太陽が姿を現した。コロナも見える。「やった、雲を通してコロナが見える」感動の一瞬である。
徐々に黒い太陽の上の端が明るくなってくる。皆既の終わりが近づいている。まわりの景色もだんだん明るくなって見えるようになってきた。一瞬赤く光った。プロミネンスか?そしてコロナのリングの一ヶ所にみごとな宝石が輝いた。あこがれのダイヤモンドリングだ。第三接触、秒単位で太陽は急速に明るさを取り戻していく。もう裸眼では見ているのは危ない。
9:38:15 | 9:38:55 |
9:40:23 | 9:40:23 |
9:40:24 | |
9:40:26 | 9:40:26 |
9:40:26 | 9:40:27 |
9:40:27 | 9:40:28 |
9:40:28 | 9:40:29 |
皆既が終わってまだ30秒ほど、まだ少し薄暗さの残る中、拍手がわき起こった。もうこの時点でみんなの頭の中にはあの皆既の太陽だけが残っていた。すこしずつ太陽は元の姿を取り戻そうとしているのに。
9:41:03 パチパチパチ! | 9:44:13 | 9:44:57 |
9:45:34 | 9:46:11 | 9:47:50 |
9:47:51 | 9:51:59 | |
9:52:36 最後の画像 これ以降太陽見られず |
その後も太陽は雲の間から見え隠れしながら少しずつ明るさを取り戻していった。そして第三接触から20分もたたないうちに太陽は再び厚い雲の中に隠れ二度と姿を現さなかった。まさに烏鎮の奇跡だった。
あらためて写真を見ると最後に役立ったのは小型三脚に望遠レンズだったようだ。
終わってあらためて見ると最後に役立ったのは小型三脚だったようです |
まだ第四接触を迎えていなかったが、みんな荷造りが始まった。
各地から情報が入ってくる。トカラは全滅のようだ。屋久島もだめだったようだ。上海も雨だったらしい。不十分とはいえ薄雲を通して皆既が見られたことを幸運と思わなければならない。
10:02:40 記念撮影 | ||
10:10:41 片付け | ||
10:57:03 昼食会 まだ日食は終わっていない |
11:53:33 引き上げ | 11:58:20 宴の後の接待中心+ワンちゃん |
昼食場所にみんな集結。まったく見られなかったらきっと暗い昼食になっていただろうけど、とりあえずみんな満足した顔で食事をすることができた。
上海に戻る。途中から本格的な雨になった。途中おみやげ屋による。木製のショーケースが3万円だとか。ほしいが運べない。
印章彫りのおじさんの横で電動招き猫が招いていた。そう言えば中国でもけっこう招き猫があるという話は聞いたことがある。
高層ビルのふもとにある旧市街の建物は生活臭が漂う日本の原風景のようだ。しかし上海の交通事情は事故がおこらないのが不思議なくらいだ。とにかく歩行者優先なんて考えはまったくない。まさに早い者勝ちだ。けっこう大きな横断歩道にも信号がない。車が絶え間なく通中を横断しなくてはならない。もちろん車に止まって待ってくれるなどという習慣もない。ガイドの周さんも大きな交差点は渡れないとのこと。来年の万博で事故が多発しなければいいが。
上海は雨だった | ||
中国でも招き猫が招いていた | ||
おみやげや前 | 旧市街 レトロな雰囲気が漂う | 上海万博まであと・・・ |
中国名物竹組みの足場 | ものすごい勢いでビルが建っている | |
横断歩道はあるが信号はない | ||
1日目と同じ富豪環球東亜酒店 | 部屋の造りは違う |
最終日のホテルは1日目と同じ富豪環球東亜酒店。14階で部屋の向きは違う。今回の部屋はバスルームと洗面所がいっしょになった一般的なつくりの部屋だった。NHKで今日の日食の報道をしている。やはり皆既帯は全滅に近かったようだ。硫黄島付近のクルージングは成功したようだ。
本日の夕食は上海テレビ塔に近い川辺のレストラン。十数年前にテレビ塔ができたころはこの周辺には何もなかったそうだ。食事の会場での話題はもうみんな次の日食に移っている。昼食同様に皆既が見られなかったら暗い夕食になっていただろう。
その後、川辺で夜景見学。
上海テレビ塔 | 本日の夕食「海聘珍樓紡 | みんな明るく夕食 |
多くの観光船が行き交う |
NHK朝のニュース | ミネラルウォーターお世話になりました | |
上海のこの発展には日本も勝てない | チェックイン けっこう混んでいる | |
4日間お世話になった 現地ガイドの周さん |
あちこちに上海万博の案内が |
最後に招き猫ネタ。空港にはけっこう縮緬の招き猫を売っている。何となくなじみの深い顔だ。もっともこの手の招き猫は中国製が多いのでこちらが本場といえるのかもしれないが。売れ行きはどうなのだろうか。
けっこう招き猫グッズも多い | どこかで見た顔だな | |
日本で売っているものも中国製が多い | とするとこれが純正品 |
おみやげ&資料として新聞を買う。一部2元。安い。
そんなこんなで慌ただしかった3泊4日の上海日食の旅。もう終わりを告げようとしている
あっという間のフライトで羽田到着。
無事羽田到着。77時間の旅は終わった。
帰宅してグーグルマップを見ても地図と航空写真がまったく一致していない。それほど上海は急速に変化している。まして来年(2010年)の上海万博に向けて市内整備をしているのでなおさら変化が激しい。それに周辺から都市部への人の流入も激しいのだそうだ。
今の上海の発展を見ているととても日本の力では追いつかないというのが現状ではないだろうか。
何となく皆既日食に目覚めた。一回行くと病みつきになると聞いたが本当だ。特に今回のように不十分だとなおさらだ。
背景は「Cafepuff Design]のお世話になっています。