加州猫寺を探る その13    2006年4月16日

 今年になって2種類の古い富山土人形と思われる招き猫を入手しました。

 まず一つ目は小型で5体いっしょの入手しました。富山特有の膠の多さで絵の具の剥離がだいぶ進んでいました。その中の一体は比較的目の保存もよく、この招き猫の特徴を知ることができます。
 もう一体は比較的大きく、こちらはさらに絵の具の剥離が進んでいますが、加州猫寺招き猫を思わせる大きな鈴が猫の右に付いています。顔も似ています。

 まず小型の方ですが、これはこれまでにも「加州猫寺を探るその7」「加州猫寺を探るその9」で紹介しているのものと同一の招き猫です。ただ今回は実物を入手したことに意義があります。またそのいくつかは出先もわかりました。今回同時に入手した5体はオークションもので、つくりはみな同じですが、入手先はそれぞれ違うとのことです。出品者のMさんによれば、「 私の生まれは金沢の南で正に近くに猫寺がありました。当時は猫の供養にお上げしたとの知識などなく、今はその寺さえありません。今回落札頂きました5個の土人形の背景は分かりませんが出所は全て金沢です。2個は粟ヶ崎方面、1個は猫寺の近くの野町近辺、後は定かではありません。」との情報です。
 粟ヶ崎は龍昌寺から10kmも離れていない日本海に近い町で、野町は龍昌寺のすぐ南に隣接する町です。まさに龍昌寺があった場所から目と鼻の先の距離で、直接授与されたと見て間違いのないような物件です。

            
         
  大きさ 横33mm×奥行34mm×高さ65mm
  

 大型のものは高さが約18cmあり、土人形の加州猫より大きなサイズです。富山土人形に共通している膠の多さで絵の具の剥離が進み、残っているところでも大きく浮いています。目が点になっていますが、明らかに黒目の周りに彩色してあった跡がわかります。何といっても特徴は眉毛です。点を並べて書いた特有の眉毛で加州猫と共通しています。まだ首玉の右側にある大きな鈴も共通しています。また口の形に大きく凹んでいる特徴も似ています。ただ手の位置や耳の形、尾の向きなど異なる部分もありますが、おそらく同じ作者(あるいは家)によって制作されたものではないでしょうか。大きさは 横85mm×奥行75mm×高さ185mm

 
参考 加州猫

 顔をよく見ると、両者の顔には共通点があることがわかります。手元にある加州猫の退色の仕方と比較すると、今回入手した猫の首玉の上は赤だったと思われます。また加州猫にはないその下の飾り部分は赤い色が残っていますが、これは金を塗るための下地ではないかと考えられます。そうしますと右側にある金色の鈴とつながった首玉の前房となります。これは「加州猫寺を探る その10」の九州Hさん所有の招き猫の首玉のつくりと共通しています。
 また画像では薄くてはっきりしませんが、ひげは左右に3本ずつ描かれており、その描き方も加州猫と同じです。丸金の飾りこそありませんが、これはまさに加州猫そのものといってもよい土人形かもしれません。

  今回の富山土人形  参考 植山氏所有  参考 =^・^=所有

 富山土人形はなかなか状態のよいものが出てきませんが、これからも注意して探せば、加州猫につながる土人形が出てくる可能性があります。