花巻人形 (平賀工芸社)   

花巻人形
 種類:土人形
 制作地:岩手県花巻市
 現制作者:平賀恵美子(平賀工芸社)
      平賀孫左衛門( ?−1996)・・・平賀章一( ?−1999))・・・平賀恵美子(1946−     )
 
 花巻人形はかつてはさかんに制作されていたが最後の制作者であった七代目照井トシが昭和34年(1959)に亡くなり廃絶した。花巻市、北上市と照井家に保管されていた型からの平賀孫左衛門と平賀章一親子が新しい型をおこし、昭和49年(1974)頃から新たに制作を始めた。初代の平賀孫左衛門のころは主に金ベコやチャグチャグ馬こを主に制作していたようであるが花巻人形復興後は花巻人形のみを制作している。平成11年(1999)に平賀章一急逝後、存続が危ぶまれたが章一の妻、平賀恵美子により制作が続けられている。
 もともと平賀孫左衛門・平賀章一親子により二枚型で作られていたが、比較的最近のネット上にある割れた人形の内部を見ると流し込みで作られるようになった可能性がある(八郷の日々 花巻人形)。

 下の鯛抱き猫は1993年に平賀工芸社を訪問した際に購入したもので当時すでに書籍で紹介されて人気があったものである。せっかく来たのでということで完成していたものをわけていただいた。彩色場所なども見学させていただいた。招き猫はそのとき制作依頼して後日受け取ったものである。猫の人形は当時8点あったようだが、順次購入するつもりでいた。残念ながら平賀章一さんが亡くなりそれも叶わなくなってしまった。


 昭和34年に廃絶した従来の花巻人形は華やかな牡丹、桜、藤、松竹梅などの花があしらわれる作品が多かった。古作の花巻人形の歴史については花巻人形(古作)で扱う予定。


花巻人形招き猫  
鞠抱き招き猫 左手挙げ
背面は首玉以外の彩色なし

鞠抱き招き猫
かまど猫であるが花巻人形で
かまど猫となったのは大正頃からのようである
江戸期や明治のころは
まだすっきりした座り猫だったようである。
花巻で招き猫が制作されるようになったのは
いつ頃であるかは不明。

 
左手挙げで
右手で鞠を抱える
白猫に黒の斑
斑のまわりは赤の縁取り
深緑の首玉に赤い豪華な前垂れがつく
前垂れには松竹梅の模様
鞠は黒・赤・青・緑で色分けされ梅の模様がつく
尻尾は先端だけ黒
背面は首玉以外彩色なし
底面に紙が貼られている

高さ180mm×横130mm×奥行140mm
 
   

 

鯛抱き猫  
右手で鯛を抱える 黒い首玉
尻尾は彩色されていない 裏面の身体の彩色はなし


花巻人形の鯛抱き
白猫に黒と水色の斑
右手で赤い鯛を腹を上にして抱える
左手はおろしているように見えるが不明
耳の後ろから鼻にかけて黒い柄
鼻の穴は赤で描かれる
耳の中は赤で彩色
黒い丸目で細い眉毛とひげが描かれる
うろこと尾びれは金の彩色が入る
背びれは黒で金の彩色が入る

高さ88mm×横83mm×奥行82mm

 
底に紙が貼ってある  
咥えているように見えるのはご愛敬 うろこが金で彩色される
鯛抱き招き猫
有名な型のようで武井(1930)など
古い花巻人形の紹介本にもよく登場する 

背面に元の刻印跡と思われる輪がある
現在所有している鯛抱き2点にはない
(いずれ花巻人形古作にアップする予定)

 元の刻印の跡と思われる  


平賀工芸社を訪問する(2000年?)
記録がないが前後の写真からおそらく2000年と思われる
たぶんネズミくわえ猫を注文しようと訪問した時と思われる

残念ながら平賀章一さんが亡くなられた直後だったようだ
そのような時期の訪問だっただけに
まだこれからという章一さんを亡くされ
気落ちしていたお母様(平賀孫左衛門の奥様)が
寂しそうで気の毒であった

室内に案内していただき作品を見学・撮影させていただいた

残念ながら花巻人形の今後も
どうなるかわからない状態であったので
注文するような状況ではなかった
ケースに収まる数々の人形 座り猫とねずみくわえ猫
すでにデジカメを使用していた時期ではあるが
画素数の関係でフィルムカメラで撮影している
画像をよく見ると8種類の猫が確認できるので
平賀工芸社で制作されていた猫はほぼ撮影できた

座り猫は口の上半分が黒いが
招き猫とねずみくわえ猫は
口のまわりが黒いかまど猫になっている
座り猫(下左)と鯛抱き猫(下右)

この2点はかまど猫になっていない
座り猫の首玉の模様は松岡工芸社と同じ柄になっている
何の模様であろうか?
座り猫と鯛抱き猫

座り猫の隣は鯛車この座り猫は小と思われる
座り猫は堤人形にもよく見られる型
かまど猫でもこれは口の下半分が黒いタイプ
唯一単独で撮影していなかった座り猫
座るというよりは伏せている姿勢


看板は今も健在  
20年以上たっても2階の
「花巻人形 金のベゴッコ」の看板は
そのまま健在するのがうれしい
2023年撮影の画像でも変わらず

周囲には新しい住宅が増えた
2019年9月 ストリートビューより 酒瓶やビールケースもそのまま 型を乾燥させている


  平成版「花巻の名人・達人」 第16回平賀恵美子



参考文献
郷土人形図譜「花巻人形」 (日本郷土人形研究会、2001 郷土人形図譜第U期第2号)
日本の土人形(俵有作、1978 文化出版局)
みちのくの人形たち(仙台市博物館、1996 仙台市博物館特別展図録)
東北の郷土人形(遠野市立博物館、1993 第27回特別展図録)
東北の古人形(芹沢長介、1991 東北福祉大学芹沢_介美術工芸館)
招き猫尽くし (荒川千尋・板東寛司、1999 私家版)
福の素4号(日本招猫倶楽部会報、1994)
福の素30号(日本招猫倶楽部会報、2001)
日本郷土玩具 東の部(武井武雄、1930 地平社書房)
「鯛車 猫」(鈴木常雄、1972 私家版)
郷土玩具図説第七巻(鈴木常雄、1988覆刻 村田書店)
全国郷土玩具ガイド1(畑野栄三、1992 婦女界出版社)
おもちゃ通信200号(平田嘉一、1996 全国郷土玩具友の会近畿支部)
招き猫博覧会(荒川千尋・板東寛二、2001 白石書店)