鶴岡人形(かわら人形)     

鶴岡人形(かわら人形)
 種類:土人形
 制作地:山形県鶴岡市紙漉町根木橋
 現制作者:再興後中断?  1958年(昭和33年)最後の作者尾形喜一郎が亡くなり廃絶.。近年になり喜一郎の子、尾形弘一により再興。
      尾形喜助(初代)・・・・尾形藤七(2代目)・・・・尾形喜惣(喜惣治)(3代目)・・・・尾形喜長(4代目)・・・・尾形喜一郎(5代目)・・・尾形弘一(6代目)

庄内春秋第10号(1933)・・・致道博物館ブログより
 創始は定かではないが尾形家に伝わり使用されている型は嘉永年間(1848〜1855)のものが大部分であるという。それ以前の時代が判明しないものもかなりあるという。嘉永年間の型は尾形喜惣によって制作されたものであるという。尾形家は瓦師を生業とし、藩主酒井候のお抱え職人として制作していた。

全国郷土玩具ガイド2(畑野栄三、1992 婦女界出版社)より
 江戸末期に尾形喜助(弘化3年没)あるいは尾形藤七(明治10年没)の代に作り始められた。尾形家は茅葺き屋根師で冬季ははかわらけ(土器)を制作していた。そのかたわら、伏見の型抜きから人形制作が始められた。人形の中に土玉(ガラ)が入っているものが多く見られる。
 <注>
   尾形家が瓦師であったのか茅葺き屋根師かははっきりしない。
        ※瓦師:瓦をつくる職人・瓦で屋根を葺く職人
        ※「土器」読み:かわらけ
   畑野氏は「瓦人形のカワラは屋根瓦を指すのではなく、カワラケすなわち土器のことであり、素焼きの器を焼くのと同様にして人形を焼いたので「カワラケ人形」が「瓦人形」と混同したようである。」としている。

日本の土人形(俵有作)より
 型は喜長の曾祖父が自ら型を作って焼いたものとある(足立孔執筆)と聞き取りと思われる記述がある。。
全国郷土人形図鑑(足立孔)より
 ディテールがはっきりしているので伏見の型抜きではなく、型売りから購入したものも多くあるのではないかと推測している。

 日本郷土玩具東の部(武井武雄)によれば、「毛を植え込んだものが多く見られ、目は銀杏のような菱形で特徴がある」、また鶴岡市内では「加藤永吉、石橋屋玩具店などが製造所などの看板を出して取り次いでいた」とある。出版当時の制作者は記されていないが年代から考えると尾形喜長ではないかと思われる。
 
 館藏品展〜やきもの〜 1984(山形県立博物館)など山形県立博物館の出版物等では大宝寺人形として扱われている。ただし大道寺人形は明治半ばで廃絶した別の人形ともいわれている。

 日本の郷土玩具東北((坂本一也・西沢笛畝)には1960年制作者が高齢かつ病気のため制作を中止したとあったがこれは1955年の間違いか?どちらにしろ亡くなる前にすでに制作は止めていたようである。そして1958年最後の制作者である尾形喜一郎が亡くなり廃絶したが、近年になり喜一郎の子、尾形弘一により再び制作される。2016年4月1日の庄内日報によれば「約20年程前に一次復活したが現在は制作されていない」とあるので制作再開は1990年代半ばであったと思われる。
     
 以上のように鶴岡人形に関しては断片的な資料しか入手できず不明な点も多い。
       

 高さ65mm

 明治期のものと思われる座り猫

鼻が大きな特徴的な面相
黄色の目に黒の瞳
ひげは描かれていない
模様なしの赤の首玉
尻尾は黄色に黒の虎柄
からだには黒の斑模様
前面と脇に3つの点が描かれている。
表側の彩色のみで裏面に彩色はない。
2個所にある3つの点は肉球か?     
前側の3つの点 裏面の彩色はなし     
裏書きの加●は判読できていないが、●はくずし字の「藤」に似ているので取次店の「加藤」かもしれない

        上の画像はすべて名古屋のNさんによる。


 もう1点の猫は伏見を思わせる型である。古い伏見には土玉(ガラ)が入っていたという。北前船で運ばれ東北に定着して制作され始めた土人形にはガラが入っているものがあったという。

爪らしき彩色がある 首玉の脇と正面にあるのは鈴
前垂れの模様不明 裏面の彩色はなし

高さ約100mm×横105mm×奥行60mm

やはり明治期のものと思われる座り猫
伏見の猫に似る

黒い耳に赤の彩色
黄色の目に黒の瞳
ひげと眉毛は描かれている
緑青の模様なし首玉に赤の前垂れと3個の鈴
尻尾は虎柄にはなっていないが
黄色い縁取りの彩色が残っていてなぜか三毛
からだには黒の斑模様で縁取りはなし
表側の彩色のみで裏面に彩色はない。
ガラ(土玉)入りでかなり高い音がする

  今戸焼(いまの人形)の吉田さんによれば
このガラ入りは
本家伏見では失われた伏見人形のDNAが
受け継がれているのではないかとのこと。
      
裏書きがある
緑(緑青)の首玉に金色の鈴  
尻尾の黄色は目と同じ色か?  裏書きはまったく解読できない


 鶴岡土人形には他に「鞠抱き」などもみられる。

高さ100mm×幅80mm

おもちゃ通信200号には
鶴岡土人形として「鞠抱き」が掲載されている。
相良などにある型とほぼ同じものであるようだ。

掲載画像はこの1枚だけなので
裏書きがあるかはわからないが、
今度訪問したときに見せてもらおう。
鶴岡土人形の「鞠抱き」  

   
    
     
尾形弘一(6代目)による制作に関して
 鶴岡土人形
 庄内日報 2016年4月1日

 つるおか菓子処木村屋 瓦チョコ



参考文献
日本郷土玩具 東の部(武井武雄、1930 地平社書房)
全国郷土玩具ガイド2(畑野栄三、1992 婦女界出版社)
全国郷土人形図鑑(足立孔、1982 光芸出版)
日本の土人形(俵有作編集、1978 文化出版局)
日本の郷土玩具 東北((坂本一也・西沢笛畝、1962 美術出版社)
おもちゃ通信200号(平田嘉一、1996 全国郷土玩具友の会近畿支部)
やまがたの玩具展 図録(山形県立博物館、1983)
山形県立博物館研究報告(山形県立博物館 1975)